正義なんて

祭りを終え、新居浜から松阪に向けて出発する日に母が荷物にそっと入れてくれた本。
「この間読んだけん入れとこわい」なんてサラっと言うわりにタイトルのメッセージ性強めやん。笑
きっと何か伝えたいことがあるんだろうなと思い、読んでみることにしました。

本書は著者がこれから旅立つご子息に向けて綴ったメッセージで、生きていく上で大切にすべき考え方が語られています。
内容自体は至極真っ当なことで、特別目新しいことや独自の視点から語られているようなことはありません。


だからこそ響く。

自分が親になった今だからわかることですが、親が子に伝えたいことなんて、斬新なアイデアとか考え方とかそんなことじゃなくて、もっと普遍的なこと。
道徳観であったり、対人関係で上手くやっていくための方法だったり、物事が上手くいかないときにどうすればいいのか、どうあるべきなのかという考え方や心の持ちようだったり。

子ども側からすれば「何だよ、そんなことわかってるよ」と思うようなことかもしれません。
だからこそ、一緒にいるときはなかなか伝えられないし、聞く耳を持つことも難しいのかもしれません。
著者の方も前書きで「そのうちに」と思っているうちに18年経ってしまったと語っていました。
僕の母も20年前に僕が家を出た日まで色んなことを言いたくて、言えなくて、ここまで来たのかもしれませんね。(だいぶ頑固だったので、まぁまぁ言いづらかったと思います。ごめんなさい。)

母がどういうつもりで僕にこの本を持たせたのかはわかりません。
僕に伝えたかったことなのかもしれませんし、親になった僕に子育てのヒントを与えてくれたのかもしれません。
本当にこの間読んだ本を何となく渡しただけなのかもしれません。(それもありそうで怖い。笑)

ただ、この本に記されている至極真っ当な教えの数々は母の生き方に通ずるものでした。
何か特別な才能や特技があるわけではありませんが、字や言葉遣いが丁寧で、人の悪口を言わず、ベクトルが自分に向いていて他人のせいにしない。自己犠牲の塊のような人で、他者のために身を粉にして働くことができる人。
真面目で、何も報われなくても自分が思う正しいことを愚直に続けられる人。

母の言うことはいつも正論で、普遍的で、だからこそ面白くなくて「はいはい」みたいに聞き流しがちでしたが、こういう人が言う「当たり前のこと」って重みがあるなと、この本を読んだ今は思います。

ただね、僕も社会に出て色々経験してきて、特に経営者になってから痛感することもあるんです。
世の中、正しいことをやってれば結果がついてくるわけじゃない。
汚いこと、道徳に反することやってるヤツの方が成功してたりするんですよ。
誰かのためにやったことが自分の首を絞めることなんて日常茶飯事。
正直「何かアホらしいな」って思うことも多いです。
実際、母だってこんなに頑張ってきて、ほとんど何も報われていないように見えます。

正義なんて何になるんだよ。

そう思いかけていましたが、それでも今この本を僕に授けたということに母の信念の強さを感じます。
もう一度、自分が正しいと思うことを信じてやってみよう。
そう思わせてくれた出来事でした。

この本にはこう書かれていました。

正義=強さ+優しさ

まさに母そのものです。
まだまだ遠く及びませんが、目指すべき人間像。

帰る前ぐらいしか連絡とらないけど、いつも近くに感じています。

ありがとう。