競争闘争理論

弊社も参画させていただいております、「1% FOOTBALL CLUB」を運営する特定非営利活動法人love.fútbol Japanで理事を務められている、サッカー指導者の河内 一馬さんの著書。

日本サッカーが強くなるための課題、海外の強国のサッカーとの違いを技術、戦術、フィジカル等に求めがちですが、もっと根本的、本質的なところに答えがあるのではないかという提言が語られています。

これまで我々はサッカーを「スポーツ」の中のひとつの競技として捉えてきましたが、何かを正しく理解するためには適切な分類が必要で、著者が海外のサッカーに触れた経験等からスポーツを大きく「競争」「闘争」に分け、さらにそれを「団体」「個人」に分類しています。

競争と闘争の定義は下記の通りです。

・競争=異なる時間または異なる空間において優劣を争う→相手を妨害できない
・闘争=同じ時間かつ同じ空間において優劣を争う→相手に妨害を加えることができる

全てのスポーツは下記の4種類(6種類)に分類することができます。

①個人競争(短距離走、競泳、マラソン、ゴルフ、フィギュアスケートなど)
②団体競争(リレー、駅伝、新体操団体、アーティスティックスイミングなど)
③個人闘争(格闘技など)
3-2)間接的個人闘争(テニス、卓球、バドミントンなど)
④団体闘争(サッカー、バスケ、ラグビー、水球、ハンドボールなど)
4-2)間接的団体闘争(野球、バレー、テニス・卓球のダブルスなど)

間接的闘争=同じ時間かつ同じ空間において優劣を争うが、相手と自分の間に物理的距離が存在し道具を介して競うスポーツ

このように分類を行ったとき、日本が世界で結果を残せていないのは【団体闘争】のみなのです。
では、そんな団体闘争に属するサッカーで結果を出すためにはどのようなことが必要なのでしょうか。
競争と闘争の特徴の違いを比較しながら考えらています。

競争闘争
保証されている権利技術を発揮する権利相手に影響を与える権利
自信練習量試合での成功体験
(失敗するかもしれないトライが必要)
集中すべきもの技術発揮自らに影響を与える可能性のあるもの
目的(勝利)意識しない方がいい意識しなければならない
チームワーク互いに干渉しない
(互いの心地良い状態を邪魔しない)
意見・感覚・主張を擦り合わせるための衝突が不可欠
正解を選択するゲーム選択を正解にするゲーム

これらの特徴を踏まえて考えると、これまでサッカー界でも行われてきた過剰な長時間練習は非効率であることがわかります。
全く無駄ではないけど、発揮する権利を保証されていない技術の練習に時間を費やすって生産性低そうですよね。
それなら試合に課題意識持って前向きにチャレンジする方が良さそう。

「競争」の分野で結果を出してきた日本のスポーツなので、その分野で行われてきたことが正解として伝えられてきましたが、そもそも「スポーツ」を全て一緒くたに考えることが間違えていると提言されています。

試合中のメンタリティに関しても、競争では自らにフォーカスし、これまでの練習で培ってきた技術を最大限発揮することが最重要。
「相手」や「勝利」に意識を向けることは、むしろその集中を自ら妨害するようなことになります。

しかし、闘争においては相手、味方、ボールなど、自分に影響を与える可能性のある様々なことに集中し、対応していかなければなりません。
練習してきた技術や、「自分たちのサッカー」を出そうとすることが、かえって勝利の邪魔になることもあるのです。
競争的スポーツの教育を受けて育った我々は「手段の目的化」を起こしやすいのではないでしょうか。

競争は「正解を選択するゲーム」
闘争は「選択を正解にするゲーム」

競争と闘争の違いについて触れたパートのまとめとして、このようなことが語られていて、僕が所属している松阪市リーグのCordisというチームのことが真っ先に頭に思い浮かびました。
このチームは自他共に認める「闘える」チームです。
僕自身、自分に足りていない「闘う」という部分を鍛えたくてチームに入れてもらいました。

選手やチームを評価する上で「闘えている or 闘えていない」という軸があると思いますが、その評価基準って曖昧ですよね。
何となく「球際で強く行けているか」的なニュアンスで使われているような感じでしょうか。

しかし、上記の特徴を踏まえてCordisを分析してみると、

・とにかく自分がマークする選手を追い回して相手に影響を与えまくっている
・「それ無謀だろ」と思うようなチャレンジにも「ナイストライ!」という声が出る(多分本気でそう思っている選手が多い)し、みんなそれに合わせた動きをする
・めちゃくちゃ声が出る(自分に影響を与えそうな情報を周りが教えてくれる)
・勝利以外考えていない

などなど、闘争的にフットサルに取り組めていることがわかります。
だからCordisは「闘っているよね」と言われるんだなと感じましたし、あんなにめちゃくちゃなフットサルをしているのに楽しいし、そこそこ勝てている原因がわかったような気がします。

僕は自分のことを典型的な日本人のメンタリティだと評価していて、本来は競争的なスポーツが向いているんだろうなと思います。
なので、今ハマっているマラソンなんかは、きっとめちゃくちゃ向いていて、自分でもそれを実感しています。
(できればサッカー始める前に気付きたかったぜ。笑)

しかし、団体闘争であるサッカー・フットサルを好きになってしまったんだから仕方ありません。
少しでもそれを楽しむため、試合で活躍するために、この特徴を理解してプレーしていきたいと感じました。

また、世界的に人気があるスポーツが多いのも団体闘争だと思います。
「相手に影響を与える権利が保証」されていて、複雑で、不確実性の高い(結果がわからない、番狂わせが起こりやすい)競技特性が人気の理由なのかな。

上手くまとまりませんが、とても興味深い内容の書籍ですので、サッカー・フットサルに関わる選手や指導者はもちろん、他のスポーツに関わる方にも是非読んでいただければと思います。