傲慢と善良

あるPodcastで、この小説について語られていて、気になったので読んでみました。
小説なんていつぶりだ?笑

失踪した婚約者を探す過程の中で、出会う以前の婚約者について知っていくという物語。
二人が出会うキッカケとなった婚活をテーマにした恋愛小説でもあり、ミステリー的な要素もあって、物語自体が非常に面白くてサクサク読み進められるのですが、刺さる部分は哲学的なところでした。

主人公の二人が出会うキッカケとなった婚活に関する場面が大きなウエイトを占めるのですが、その中で人間が持つ「傲慢」と「善良」について考えさせられます。

これらは物語に登場する結婚相談所の人の言葉。

「現代の日本は、目に見える身分差別はもうないですけれど、一人一人が自分の価値観に重きを置きすぎていて、皆さん傲慢です。その一方で、善良に生きている人ほど、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多すぎて、”自分がない”ということになってしまう。傲慢さと善良さが、矛盾なく同じ人の中に存在してしまう、不思議な時代なのだと思います」

自分もめちゃくちゃ「傲慢」だったなとグサグサ刺さりました。
以前のブログでも書きましたが、利他的な価値観を大切にしているつもりだし、できるだけそういう生き方を選択してきたと思っています。
そして、それは割と世の中に共感されやすいものなのではないかとも感じています。

しかし、対極にある利己的な価値観が必ずしも「悪」ではないはずです。
にも関わらず、自分は利己的な言動を取る他者に強い嫌悪感、憤りを感じてしまうことがよくあります。

利他 or 利己に関わらず、自分が強く信じていることであればあるほど、違う考え方を許容できないのです。
自分の価値観そのものが世間から「善良」と評価されるものであったとしても、違う意見を受け入れないのは「傲慢」だと改めて反省。

「ささやかな幸せを望むだけ、と言いながら、皆さん、ご自分につけていらっしゃる値段は相当お高いですよ。ピンとくる、こないの感覚は相手を鏡のようにして見る、皆さんの自己評価額なんですよ。」

みんな「自分なんて、、」と自己評価が低いようなことを言う一方で、相手に対して「ピンとこない」というのは、無意識のうちに相手を値踏みし、その評価額が自分と釣り合うかどうかを測っていると。
要は「善良」そうに装っているけど、本当は「傲慢」なんだということかな。

ただ、これを「傲慢」としてしまうと、誰でもいいやんって話になってしまう気もするし、100%同意ってわけじゃないけど、恋愛、結婚に関わらず、他者と関わる中で、知らず知らずのうちに自分と比較して優劣をつけてしまうのは、たしかに「傲慢」な態度だなと思います。
自分の「あり方」として参考になる考え方でした。

ここで全てを語るわけにはいきませんが、同じ出来事が別の人物からの視点で描かれていて、どちらから見るかで全く違う捉え方になる面白いストーリーでした。

深く考えなくても、単純に物語として面白いので、是非読んでみて下さい。